小木は能登半島の内側の富山湾に面した能登町の東部にあります。古くから海岸に沿って集落が軒を連ねており、そのため漁業は盛んでタラの加工品を藩主に献上した記録が残っています。そのタラ漁の餌としていかを使っていたのが、小木のいか漁のはじまりと言われています。
◆ 明治の頃
波静かな小木港は強風やシケの際の「風待ち湊」として知られ、北前船などの船舶がよく寄港していました。小木の漁師や若い衆は、北前船から新しい知識や多くの情報を仕入れ影響を受け、明治に入りそれまでの漁の腕を活かして北海道を目指し新しい漁場を開拓していきました。同じ漁船で船体の色を塗り替えサケマス漁といか漁を二毛作のごとく行っていた時代もありました。
◆ 戦後
漁船の機械化や冷凍技術が進み、昭和40年代後半には99トンの中型イカ釣り漁船が登場し、水揚げは最盛期を迎えました。
昭和50年代半ば、それまではキロ単位のブロックイカが主流だったころ、家庭用でも美味しく使いやすいようにと船上で一尾づつ冷凍した「船内一尾凍結いか」の技術を日本で初めて開発しました。
◆ 現在
現在「船内一尾凍結いか」は、いか釣り漁の中心となっており、知る人ぞ知るブランドいか「小木の船凍いか」として鮮度の良さと品質の高さが認められています。
- 船内一尾凍結いかの箱
- いか釣り漁船の出船式
小木のいか釣り漁は大きく2つあり、その1つが日本海を北上するスルメイカを追って獲る遠洋漁業です。
時期は6月~12月で、南は島根の沖合から北は北海道の稚内の漁場で獲り、1航海あたり数週間~1か月の操業を半年間続けます。集漁灯で集めたいかを自動いか釣り機で釣り上げ、船内で急速凍結し箱詰めしてから船内冷凍庫で保管し、「船凍いか」として水揚げします。
また、中型~大型の船上凍結できるいか釣漁船を所有している漁港は、主に青森の八戸港、北海道の函館港、能登の小木港の3港です。
- いか釣り漁船内
- 自動いか釣り機
小木のいか釣り漁のもう一つが遠洋漁業に比べると漁獲量は少ないですが、能登沖の近海漁業で獲る季節ごとのいかがあります。時期になると早朝、能登沖の水平線には漁火を灯した小型のいか釣り漁船が並び、漁法は疑似餌で一本一本釣り上げて、獲れたいかは船上で氷詰めにされ、小木港に「生いか」として水揚げされ出荷されます。
小木港では季節ごとに5種類のいかが獲れますが、主な3種類をご紹介します。
- 小型いか釣り漁船
季節のいか
春夏/ 4月〜7月
- スルメイカ
- 食感が良く甘みがあり、幅広い料理に使えます。皮をむいた時の色は他のいかに比べて少し黄みがかっています。
秋冬 / 9月〜12月
- アオリイカ
- イカの王様と言われる高級イカ。イカの中で一番甘みと旨味があり、食感は弾力がありお刺身で食べるのが一番美味しく、また身が特別白いのも特徴です。
冬 / 1月〜3月
- ヤリイカ
- 身は薄く刺身にすると歯ごたえのある食感と淡白ながら上品な味わいが特徴です。
とも旗祭
小木の春は御舟神社の豊漁と航海安全を祈願する「とも旗祭り」が告げます。とも旗祭りは小木湾内を巨大なのぼり旗と5色の吹き流しがたなびく雄壮な海のお祭りで、石川県の無形文化財にも指定されています。祭り当日は、北東から風が吹き、祭りが終わる頃には南西の風に変わり豊漁になると伝えられています。
[写真/能登の里山里海情報ポータルサイト]イカす会
イカす会は6月初旬に開催される町のイベントで、いかの一本釣りやいか釣り漁船見学、美味しいいかを食べられるコーナーなどいかにまつわる催し物が盛り沢山のイベントです。また出港する直前の開催なので、小木港にずらっと並ぶペンキ塗りたての真っ白いいか釣り漁船も見物です。
[写真/能登町観光ガイド]